劇場版・艦これ

テレビアニメ化で色々あった艦これですが、ようやく映画公開のはこびとなりました。史実とゲームの兼ね合いとか、ディオメディアが同じ期間に4作ほど同時に放送していたり、艦これブーム全盛期のあらゆる提督達の期待やら重すぎるものを背負わされて、悪い意味でめだってしまった作品だったわけですが…結局映画に1年半ほどかかりました。
思うところは色々あるんですけど、TVアニメ版を「こんなもの」と否定する気もなく、かと言って如月とか祥鳳とか不遇な扱いをした部分は良い思いはできず…という感じで見に行ったわけですが、映画を見てとりあえず「全部許す!」という気になりました。視聴者が許すも何もあったもんじゃないと思いますけど。


ともかく、この映画のスタート地点は「反省」から始まっています。TVアニメが多数の提督達からダメ出しを受けた部分を真摯に受け止めて、じっくりと突き詰めて煮詰めて1年半。例えばあの艦娘が出てこなかった!と言われればしっかりと映画で出番を作り、妖精さんの出方が物凄く雑だと言われれば色々な部分で出番を作り、二次創作的な面を出すなと言われれば艦娘がマジメに悩んだり、しっかりと艦であるような部分を見せたり。そしてアクションシーンも迫力を増してこれでもかというほどに動き回ってくれます。


そして、この映画で艦これにまつわる重要な設定をオープンしてきました。今回は脚本に花田氏のほか原作・田中謙介氏が関わってまさに映画のために出し惜しみなく切り札を切ってきたというところ。冒頭で轟沈したはずの如月が突然帰還。なぜ帰還できたのか、長門をはじめとした司令部が見つけた異変が柱となって終盤までなだれ込んで行くわけです。
その中で、テレビアニメで「どうして?」と首を傾げるような展開をうまーく盛り込んで、テレビアニメを100%土台にした上で素晴らしい展開を作りだしていくわけです。後付けじゃないかと言えばそれまでですが、こんな風に繋げてこれるのであれば何一つ文句の出しようがありません。
本当にこのネタをやって良かったのかどうか、には疑問の余地がありますけど。映画を見た後では多分艦これのキャラクター達の見方が相当変わるかと。それぐらいのことをやってのけています。この設定をやることで、テレビアニメで中途半端に再現させていた「史実」の部分を結局捨てきることになりました。多分この作品の舵取りにとっては、その方が良いのかもしれませんけど。

舞台となる「鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)」の重さの通り、艦これの覚悟と本気を見せつけられた一作でした。これならまだまだ艦これも期待できる。