劇場版仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル

まず「仮面ライダー」「古代ドイツの錬金術師」「暴れん坊将軍」「新ライダーお披露目」「家族愛」「3D」を全部同じ映画にブチ込んでみることはできるか、と考えてみましょう。普通に考えると結論は「無理」だと思います。
でも、この映画は実現しちゃったんです。無茶苦茶を滅茶苦茶な方法でくっつけると自然な形で繋がるものなんです。細かいことはいいんです。ある意味でここまでやりきってしまったらアリなんです。こんな強引な手でも、笑えてしまうぐらいにうまく行くものです。そういう意味で言えばライダー映画としての娯楽路線の極地だと思います。だから今までの夏映画特有のギラギラした感じがなく、春先の電王映画のようなのんびりした空気になったのかも知れません。
鴻上会長が復活させた古代の錬金術師・ガラが日本を舞台に地球を滅ぼす怪しい錬金術を開始。メダルを裏返すように新宿一体がドイツの森に、さらに東京中が江戸時代に、恐竜時代に反転し住人達を閉じ込めて行く。大パニックを起こす住人をよそに解決策を探すライダー達、しかし伊達さんはあのミルクタンクを映司のいる江戸時代に持っていかれてしまう。さらに映司も恐竜・トラ・バッタ以外のメダルを全て取られ…というお話です。
こんなピンチに颯爽とやってくる貧乏旗本・徳田新乃助。どう見ても将軍です。しかも暴れん坊な。そんな旗本(というか吉宗)はオーメダルに見覚えがあり…?というところから話しが広がっていきます。

後半は錬金術師・ガラとの決戦にエピローグへとなだれ込んでいく急展開。この江戸時代パートと決戦パートで大きく空気が異なるのも今回の特徴。このまったく会いそうもない空気を一気に繋げるのが「家族愛」。ホントに良く繋げています。まさに相容れないように見える二者が手をつなぐことで解り合えるようにごくごく自然に、奇跡的だと思えるレベルで繋がっているんです。これには拍手を送りたいところ。ここまで「奇跡レベルになるほどバラバラになるような状態」を狙って作っているのか、私には解りかねますけど。
アクションシーンはW以上に3Dをうまく活用しています。特に8コンボ勢ぞろいの戦闘シーンはオーズ達がスクリーンを縦横無尽に駆け巡る。手前に奥にと飛び回る姿は3Dの視認性あってこその迫力があります。3D映画には結構懐疑的な人間ですが、ここは溜め息が出るぐらいのもの。さらに映画ならではのサプライズ、映司がまさかの!?これは結構予想外でした。

そして「新ライダー」フォーゼ。見た目以上に破天荒。全てのライダーとお友達になりたいと豪語する最新ライダーですが、さて彼の目的は成就するのか。少なくとも友達をハンマーにするのまはやめましょう。結構見た目の奇天烈さよりもオーズ以上に予想のしづらい動きをして、凄く面白い奴が出てきたという感じがします。

そして、最終的にはグリード達とも手を繋げるんじゃないかという、現在のテレビシリーズではあり得ないような方向性が見えてきます。もしも彼らにも解り合えるところがあったなら、オーズと利害が一致する場面があったとしたら、ひょっとしてアンク以外にもメダルを投げ渡す関係を作れたのかも知れません。そう考えると、カザリの死はあまりに惜しいことをしたのかも知れません。ちょっとだけ見てみたかったなぁ、カザリや他のグリードと同色メダルコンボの共闘とか。そう考えていくと、「劇場版キバ」の本編を補完するような劇場版の関係にも似た満足感が生まれます。
まぁ、つまり「どんな支離滅裂でどうしようもない状態でも、人と人が手をつなげば大体何とかなるもんだ」という、そんな教訓。